矯正歯科で抜歯する理由は?必要な4つの症例と非抜歯でOKなケース

矯正歯科では、治療で歯を並べるスペースを作るために、抜歯しなければならないことがあります。
矯正治療で抜歯が必要といわれて「どうして抜歯が必要なの?」「健康な歯なのに抜きたくない!」と考える方も多いでしょう。
そこでこの記事では、なぜ矯正歯科で抜歯が必要なのか、抜歯が必要なケース、抜歯をしないで矯正治療を行うデメリットやリスク、非抜歯で矯正治療ができる場合などについて詳しく解説します。
「矯正治療は、必ず抜歯しなければいけない」というわけではなく、症例によっても異なります。本当に抜歯が必要なのか、そうでないのか見極めるためにも、矯正歯科における抜歯について知っておきましょう。
矯正歯科で抜歯が必要な理由
通常であれば、虫歯や歯周病の悪化などによってやむを得えない場合に抜歯を行いますが、矯正治療では、健康な歯を抜くこともあります。このような矯正のための抜歯を「便宜抜歯(べんぎばっし)」といいます。
抜歯して矯正治療を行うことは決して珍しくなく、全国平均で見ると、矯正治療の際に抜歯を行った患者さんは50%以上ともいわれています。
とはいえ、何も問題のない健康な歯を抜くのには抵抗があるという方も少なくありません。健康な歯を失うことや抜歯に伴う痛み、治療中に隙間が気になる点は、抜歯のデメリットです。
しかし、抜歯して治療することにはメリットも多くあります。例えば、以下のような点です。
- 歯を並べるためのスペースを確保できる
- 難しい症例にも対応しやすい
- 治療計画が立てやすい
- 治療期間を短くできる可能性がある
歯の大きさや顎のスペースは個人差も大きく、無理に非抜歯で歯を並べようとすると歯並びは整っても、口元が突出したり、Eライン(鼻と顎先を結んだ線で、横顔の美しさに影響する部分)が崩れてしまうリスクがります。
矯正歯科で抜歯が必要となる4つのケース
では、具体的にどのようなケースの矯正治療で抜歯が必要になるのでしょうか?ここから、3つのケースについて詳しく見ていきましょう。
上顎と下顎の噛み合わせが大きくズレている
出っ歯(上顎前突)や受け口(下顎前突)といった上顎と下顎の噛み合わせのズレは、歯並びや噛み合わせに大きな影響を与えます。
大きなズレがある場合は外科手術によって治療もできますが、手術は避けたいという方が少なくありません。その場合、ズレに対する移動量を計測して抜歯することで、外科手術なしで矯正ができるようになります。
ただし、顎の骨からズレがある場合や、歯の移動だけでは改善が難しい症例の場合は、外科手術が必要となることもあります。
歯の大きさと顎の大きさのバランスがよくない
歯は、それぞれ上下顎の骨の中に生えています。
顎のスペースが足りないと、歯がきれいに並ぶことができなくなり、歯茎の上の方で止まってしまったり(八重歯)、歯が前後に重なり合って生えたりします。このように、歯がデコボコやガタガタに並んだ不正咬合は「叢生(そうせい)」と呼ばれます。
顎に十分な広さがあり、歯の大きさとのバランスが取れていれば、歯を少し削るなどの方法でスペースを確保して矯正治療ができることもあります。
しかし、スペース不足の状態で無理に非抜歯で矯正治療を進めると、口元が膨らんだ仕上がりになったり、噛み合わせが悪くなってしまう可能性があります。
現代人は昔に比べて柔らかい食べ物を食べることが多くなった影響で、顎が小さい傾向にあります。
親知らずが歯並びに悪い影響を与えている
親知らずが正しく生えず、斜めや横向きに生えていると、歯茎を圧迫したり、別の歯に負荷を掛けるなど悪影響を与えてしまうことがあります。
このような状態で無理に抜歯をしないで矯正治療を行うと、逆に歯並びを悪化させてしまうリスクもあります。
上下顎前突の場合
上下顎前突とは、歯並びはそこまで悪くないものの、口が閉じづらい、口元が出ているといった状態のことです。口元が膨らむことで横顔の印象が変わり、さらに歯の健康寿命や歯並びの安定性にも影響を与えることがあります。
抜歯が必要な矯正治療であるにもかかわらず、無理に非抜歯で行ったことで上下顎前突になってしまうケースもあります。
無理な非抜歯矯正のデメリット・リスク
本来は抜歯をすべき症例なのに、無理に非抜歯で矯正治療を進めると、以下のようなデメリットやリスクが生じる可能性があります。
- 前歯が前方に突出する(口元が出っ張ってしまう)
- 奥歯が斜めに倒れてしまう
- 歯茎が下がってしまう
- 治療期間が長引く
- 後戻りが起こりやすい
歯が並ぶための十分なスペースが不足していると、前歯が飛び出て口元が出っ張ってしまったり、奥歯が斜めに倒れてしっかり噛み合わなくなるといった悪影響が生じてしまうケースがあります。
また、歯茎に負荷が掛かることで歯肉退縮(歯茎が下がること)が起こることもあります。その他にも、治療期間が長引く、後戻りが起こりやすいといったデメリットも生じることがあるため、注意が必要です。
非抜歯で矯正治療ができるケースもある
「矯正治療では絶対に歯を抜かなければいけない」ということではなく、非抜歯で矯正治療ができるケースもあります。たとえば、歯並びの凹凸が少ない場合や、大きな乱れがない場合は非抜歯で治療が可能なこともあるでしょう。
しかし、顎が小さく、歯が並ぶスペースが十分に確保できない場合は、歯を並べるスペースを確保するために歯を抜いて治療することが一般的です。
大人になってからは顎を大きく拡大できなくなるため、幼少期のうちから矯正治療を始めておくと、抜歯せずに治療できる可能性が高まります。
顎や歯の成長段階の年齢から矯正治療を始めれば、治療時の痛みを抑えられるというメリットもあります。口呼吸や舌癖といった、歯並びやお口の健康に悪影響を与える悪い癖も改善できるため、お子さんの歯並びに問題があると感じたら、早めに矯正歯科に相談するのがおすすめです。
非抜歯で矯正する方法
非抜歯で歯科矯正を行う場合、以下のような方法で治療します。
- 歯の側面を少しだけ削る(IPR、ストリッピング、ディスキングとも呼ばれる)
- 奥歯を後ろに移動させてスペースを作る
- 歯列の幅(顎)を拡大する
抜歯矯正にせよ非抜歯矯正にせよ、治療方法は一つではありません。希望や悩みを踏まえた上で、自分に適した方法が見つけられるよう矯正歯科医師としっかり相談することが大切です。
矯正歯科の抜歯についてのQ&A
ここからは、矯正歯科での抜歯についてのよくある質問などについてご紹介します。
矯正歯科の抜歯ではどの歯を抜く?
矯正のために歯を抜く場合は、噛み合わせに大きな影響を与えない歯を選びます。
通常は、前歯の真ん中から数えて4番目の第一小臼歯か、5番目の第二小臼歯です。これらの歯は、他の歯にかかる負荷を分散させる犬歯や、食べ物を切る前歯と比べて、抜いても機能的な問題が少ないためです。
奥歯と前歯の間に位置する小臼歯は、矯正で動かす距離が短くて済むという利点もあります。親知らずが傾いて生えていて矯正に支障をきたす場合や、矯正した後の歯並びを乱す可能性がある場合は、親知らずを抜くケースもあります。
虫歯や歯周病に侵されて抜歯が必要な歯がある場合は、その歯を抜歯することもあります。
矯正歯科の抜歯でかかる費用は?
矯正治療のために抜歯を行う場合、健康保険が適用されない自由診療となります。矯正歯科クリニックによっても変動しますが、1本あたり5,000円〜15,000円ほどが抜歯の費用相場です。
ただし、虫歯や歯周病が原因で抜歯が必要な場合などは保険適用となることもあります。詳しくはカウンセリング時に矯正歯科医に尋ねてみましょう。
なお、小臼歯は左右で4本、親知らずは合計8本ありますが、矯正治療にあたって何本抜歯するかは、症例や担当する矯正歯科医師の方針によっても異なります。
抜かなければいけない歯が多く不安な場合は、そのまま治療を進めるのではなく、セカンドオピニオンを受けるのがおすすめです。
まとめ
矯正治療では、歯や顎の状態によって、どうしても抜歯が必要と考えられるケースもあります。単に抜歯矯正か非抜歯矯正のどちらがいいとは断言できず、後悔しない矯正治療にするためには、患者さん一人ひとりの症例に合わせて適した治療を選択することが重要です。
森下駅から徒歩2分・清澄白河駅から徒歩9分の場所にある森下ベリタス歯科では、高水準機器を使い、一人ひとりの患者さんに合った矯正治療をご提案しています。
できる限り「歯を抜かない・歯を削らない・歯の神経を残す」をコンセプトに治療の方針を立てており、抜歯矯正・非抜歯矯正のメリット・デメリットを把握し、丁寧にご説明した上で治療に入ります。
セカンドオピニオンのご相談も受け付けておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。