顎関節症の症状とは?疾患の原因や悪化させる原因を知る

口を開くと「カクッ」「ジャリッ」と音が鳴ったり、口が大きく開けられなくなったりするのが顎関節症です。
顎関節症の名前は聞いたことはあっても、実際どういった疾患なのか、症状としてはどのようなものがあるか知らない方は多いでしょう。
この記事では、顎関節症とはどういった疾患なのか、代表的な症状や疾患の原因、悪化させる原因などについて解説します。
顎関節症の基本的な知識を知りたいと考えている方はぜひ、最後までご覧ください。
顎関節症とはどのような疾患なのか
顎関節症とは、顎の関節や顎を動かす咀嚼筋などの筋肉に異常が起こる疾患です。
代表的な症状としては以下の通りです。
- 顎が痛い
- 口を大きく開けられない
- 口を開くと「カクッ」「ジャリッ」と音がする
- 物が噛みにくくなる
顎は微妙に入り組んだ形と複雑な機能を持っています。
筋肉・関節・神経が集中して下顎を支え、食事をしたり、おしゃべりしたりする動きに合わせてすべての部位が連動して動きます。
顎関節症ないしは額に何らかの症状を持つ人は全人口の7~8割程度に上るとされており、実際に病院などで治療を受けている方は7~8%程度です。
顎関節症は日常生活の無意識で行っている生活習慣などが原因となっている場合が多いです。
快適な生活を送るためにも、顎関節症の理解を深め適切な対応を取っていきましょう。
顎関節症の原因とは?
顎関節症の原因はさまざま考えられ、明確にこれといったものは決められません。
ただ、原因として多く上げられるのは上下の歯の噛み合わせの異常です。
そのほか、精神的緊張やストレスが顎周りの筋肉の緊張を強め、噛み合わせをアンバランスにして無理な力がかかってしまい顎関節に負担がかかり顎関節症を引き起こします。
また、歯並びや嚙み合わせの悪さによる顎関節への負担や、顎関節がもともと弱い構造上の問題、外傷なども顎関節症を引き起こす要因です。
ほかにも、頬杖をついたりうつ伏せで寝てしまったり猫背であったりといったクセや生活習慣でも顎関節症は引き起こされるため注意しましょう。
顎関節症の代表的な症状とは
顎関節症の代表的な症状は以下の3つです。
- 痛み
- 開口障害
- 関節異音
それぞれどういった症状なのかを解説していきます。
1.痛み
顎関節症の症状の1つに、額を動かしたときに発生する痛みがあります。
具体的には、口の開閉時や咀嚼によって下顎が動くことで生じる顎関節痛と、咬筋や側頭筋といった咀嚼筋が咀嚼を行うことによって生じる痛みの2種類です。
顎関節痛
顎関節症は、顎関節周囲の軟組織の慢性外傷性病変が主な病態です。
下顎頭と接する組織に炎症が生じると、神経が敏感になり額を動かした時の下顎の動きにより刺激を受け痛みが生じます。
咀嚼筋痛
筋の痛みはさまざまな病態を原因として生じます。
代表的なものとして筋・筋膜性の痛みがあり、頭や顎周辺の持続的な痛みの主な原因となります。
筋や筋膜性の痛みの特徴は、ピンポイントかつ鈍いうずくような痛みです。
この痛みは筋肉を動かすと痛みが増す特徴があります。
2.開口障害
健康な場合、口を開いたときに自分の人差し指から薬指までの3本を縦にした状態で口に入れられます。
この状態の口の開き幅はおおよそ40mm程度で、大きく口を開けた時に40mm程度開けなければ顎関節や咀嚼筋に何らかの異常が生じていると考えるべきです。
開口障害の原因は以下の4つです。
- 筋肉に原因がある
- 関節円板に原因がある
- 関節痛を原因とする
- 顎関節や咀嚼筋のどこかが癒着している
突如、口が開かなくなった場合は関節円盤に問題が生じています。
口の開けにくさを感じており、大きく開けられなくなった場合は筋肉に問題が生じていると考えましょう。
開口障害の原因の特定は非常に難しいため、問題が生じた場合はすみやかに受診し治療を受けましょう。
3.関節異音
関節異音とは、口を開け閉めした時に、「カクッ」「ジャリッ」といった音が関節から鳴る症状です。
関節異音の最も多い原因とされているのは、関節円板性の開口障害につながる関節円板の転移や関節円板の変形です。
関節異音は基本的に痛みが生じていなければ、特段治療の必要はないとされています。
ただし、違和感や痛みなど症状に少しでも進行が見られた場合は、歯科医院を受診しましょう。
顎関節症の診断基準とは
顎関節症の診断は、1つの検査結果だけでは決められません。
いくつかの検査結果を組み合わせ、総合的に診断されます。
代表的な検査は以下の5つです。
- 開口量測定
- 下顎頭圧痛および関節頭運動状況診査
- 下顎マニュピレーション下顎頭滑走診査
- 咬筋圧痛診査
- 画像診断
それぞれ簡単に解説します。
開口量測定
まず、現在どの程度口を開けられるかを測定し、次に検査者が強制的に口を開きどの程度開くかを測定します。
問題が生じていない場合、人差し指〜薬指の縦3本分は開口でき、自力・強制どちらも差は生じません。
自力と強制に5mm以上差があるないしは、指が3本入らない場合は何らかの問題が生じていると考えられます。
下顎頭圧痛および関節頭運動状況診査
関節包や滑膜に炎症を起こしていると下顎頭に圧痛が生じます。
下顎頭外側中央部に指を置き、徐々に力を加え圧痛を審査した後に、大きく口を開け閉めさせ、下顎頭が正常に前にスライドするかを診査します。
下顎マニュピレーション下顎頭滑走診査
下顎頭の滑走障害の有無、関節痛誘発の有無、雑音発生などをみる診査です。
検査者の利き手で患者様の下顎を持ち、反対の人差し指で関節部を触りながら、下顎を片方ずつ前方に限界まで引っ張り、下顎頭がどう動くか、痛みが生じるかを調べます。
続いて、後ろに限界まで圧迫して同じように審査をします。
咬筋圧痛診査
頸部に指を置き、患者様に噛み締めてもらうと咬筋の位置と大きさがわかります。
続いて、リラックスした状態から徐々に指に力を入れ筋肉の凸凹や、固さを調べ、厚みのある部分を確かめ、筋肉の大きさの左右差や痛みの種類などを審査します。
普段から噛み締める癖のある方は常日頃から使っていることから肥大化していたり、片方だけ噛み癖があると左右差が生じたりします。
画像診断
レントゲン・CT・MRIを必要に応じて実施します。
顎関節症の治療とは
顎関節症の治療で代表的なものとして、スプリント療法があります。
スプリント療法とは、夜間の就寝時にマウスピースを使用する治療方法です。
マウスピースを装着し、噛み合わせの負担を軽減し顎関節をリラックスさせます。
そのほか、就寝時に無意識に行っている歯ぎしりや食いしばりなどによる歯の負担の軽減も可能です。
マウスピースは夜間就寝時のみ使用するため、日常生活に影響は与えません。
スプリント療法以外では、消炎鎮痛薬や筋弛緩剤などによる内科的治療や、理学療法による徒手的アプローチ、ホットパックの使用なども効果的です。
顎関節症の治療においては、重症化事例や難治症例以外で外科的手術が採用されることは多くなく、基本的には外科的手術以外のアプローチで状態の改善を目指します。
顎関節症を悪化させる原因とは
顎関節症は痛みが生じていなければ治療の必要は基本的には不要とされています。
治療後の再発可能性にも注意が必要です。
これらのリスクを下げたり、悪化させたりしないための大事なポイントが2つあります。
この章では、2つのポイントについて解説します。
1.日常生活の過ごし方
顎関節症は生活習慣に大きく影響を受ける疾患です。
顎関節症に悪影響を与える代表的な生活習慣は以下の通りです。
- うつ伏せで寝たり、ソファーで寝たりする
- 頬杖をつく癖がある
- パソコンやスマホの見過ぎで、首が前屈している時間が長い
- 食事の時ほとんど噛まない、柔らかいものばかり食べている
1つ1つは小さくても積み重なると大きな影響になります。
普段の生活習慣を見直してみましょう。
2.無理なセルフケア
正しい知識がない状態でセルフケアをするのはやめましょう。
セルフケアをする場合は、医師などの専門家からしっかりと方法や注意点を聞いたうえで実施するようにしてください。
無理なセルフケアは逆に症状を悪化させたり、誘発させたりする危険性があります。
まとめ
顎関節症とはどういった疾患なのかについて紹介しました。
顎関節症は症状の程度の差はあれど、2人に1人はなる可能性のある疾患です。
顎関節症は日常生活や生活習慣で予防や軽減もできる疾患であるため、日常生活・生活習慣の見直しも重要な要素です。
森下ベリタス歯科は、顎関節症の知見・治療経験豊富な医師が在籍しています。
顎関節症について知りたい、治療を受けたいと考えている方はぜひ1度ご相談ください。